サブスクを考えた人は地獄に堕ちるべきなのか

以前から音楽サブスクサービスへの意見や批判というものはありましたが、昨年2022年もやはり話題になっていましたね。
- 川本真琴「サブスクを考えた人は地獄に堕ちて」発言が波紋…それでも賛同の声も多いワケ
- 湯川れい子氏、音楽業界巡る変化に「音楽は無料で垂れ流しになった」「環境破壊と同じ」 サブスクに賛否
- デーブ氏 音楽サブスクに持論「作った音楽に失礼」、ヒャダインぶっちゃけ「サブスクの収入」は…
それぞれが他の様々な要因が絡んでいる発言ではありますが、共通しているのはやはり「サブスクの収益は低い」ということです。
この記事では、レーベルに所属していないアーティストのサブスク収益はどうなっているのか?を切り口に、本当にサブスク収益は低いのか、これからのサブスク時代、アーティストはどう乗り切ればいいのかなどを書いてみました。
収益が低いとはどこを基準として比較するのか?
冒頭で紹介した意見は、いずれもレーベルに所属しレコード会社や出版社によるプロモーション+CDなど旧来のフィジカル販売で収益を得られてきた方達の意見です。では、そうではないアマチュアや私のような零細アーティストの場合はどうでしょうか?
アマチュア、兼業、無所属のアーティストたちはCDを物流販売のルートに乗せること自体のハードルがとても高いです。本業が忙しいし事務所にも所属していないので、趣味で作った完成楽曲がいくつかあってもそれを販売する手段が無いか、あったとしても機会が少ない状況でした(例えばイベントで手売りとか)。
そう、サブスクが誕生するまでは・・・!
そういった人達はサブスクがなければ収益がほぼゼロであったことと比較すれば、「サブスクは収益性が良い」ということになります。
右肩上がりの収益
こんなことを書いても「でもどうせアマチュアが配信しても収益なんてほとんどないんでしょ?」と思われるかもしれません。そこで筆者の例で恐縮ですがサブスク収益のグラフをご覧ください。

サブスクには6枚のアルバムを配信していますが、全てのアルバムが右肩上がりです。どこで止まるのか、今後も注視していこうと思っています。収益は実家住まいの独身であれば辛うじて「サブスクだけで食っている」と言い張ることができる程度はあります。他に仕事をしているアマチュアであれば十分生活や機材購入の足しになるでしょう。
金額はここでは明記しませんが、note有料記事には金額も記載していますのでご興味があればご参照くださいませ。
なぜ右肩上がり?プロモーションについて
筆者の場合この右肩上がりを牽引しているのはApple MusicとSpotifyです。Apple Musicは再生あたりの収益が各種サブスクの中では高いです。Spotifyはリスナーに楽曲やアーティストを紹介するシステムが素晴らしく、ある程度放っておいても自動でプロモーションしてくれます。

このプロモーションについても前述のいわゆるプロの方たちはレコード会社や出版社なんかがやってくれるわけですが(プロモーターなんて職業があるくらいですもんね)、アマチュアにはそんなバックグラウンドはありません。ですがサブスクで配信すればプロモーションをサブスクのプラットフォームが勝手に担ってくれるわけなのです(ありがたい!)。具体的にはプレイリストへの登録や視聴傾向からのオススメなどに入れてくれる感じです。
また、CD販売は1ユーザー1回きりですが、サブスクなら繰り返し聴いてもらえる可能性があります。一度聴いた曲やアーティストは繰り返しリスナーにオススされたりするのでとても有利です。
結局良いものが聞かれる
ところで、サブスクで一度聴いた曲をもう一度オススメされたとしてリスナーはその曲をもう一度聴こうと思うのでしょうか?公開されているデータがないか探してみましたが残念ながら見当たりませんでした。
ただ、筆者個人の感触としては「前回聴いて良かった曲は聴く」なのではないでしょうか。当たり前なんですけど笑、プロモーションにどれだけお金や時間をかけたかではなく、純粋に良いと思われた曲が聴かれやすいのはサブスクの特徴の一つなのではないでしょうか。
日本は遅れている
こちらは2022年9月の記事ですが、最初の方に「音楽産業の推移」というかなり衝撃的な図が貼ってあります。
この図からわかるのは、日本ではいまだにサブスクよりもCDなどのフィジカルで動いているお金の方が多いのに対し、グローバルではそれがとっくに逆転しており配信で聴かれる方が多いということ、さらに衝撃なのが日本の総合売り上げはどんどん減少しているのに対して、グローバルでは2014年を底としてサブスクの発展とともに急回復して今も増大しているという事実です。
つまり、日本以外ではサブスクで音楽業界も大成功しているということなんですね。
人間は便利なものから逃れられない
そもそも音楽サブスクって便利ですよね。CDを買いに行ったり注文したりデータをダウンロードしたり、そんな手間もなくいつでも聴きたい時に聴きたい曲を聴ける、あるいは聴きたいものが決まっていない時はとりあえず誰かが作ったプレイリストを流すことができる。サブスクはリスナーが楽なんです。
そんな便利なものが普及せずにこのまま止まるでしょうか?止まるわけないと思うのです。いくら既存アーティストが「サブスクじゃなくてCD買ってくれ」って声を張り上げても、人間なんて楽できるほうに行っちゃうと思うのです。いずれグローバルと同じように日本でも便利なサブスクが市場のほとんどを占めるようになるはずです。いくら影響力の高いアーティストが抵抗してもそれが少し遅れるだけかと思います。
もっと言えば、アーティストからリスナーへ「サブスクは聴かないでCD買ってくれ」と声を掛けるのは、言い換えれば「便利なサブスクは使うな、俺の収益確保のためにお前は不便なCDを買え!」と言ってるわけです。
それだけでも傲慢だなあと思うんですが、それだけではありません。CDにしがみつくのは、将来的には自分の音楽収益を減らすことになると思うのです。なぜそうなるのか?
サブスクは登録者が増えれば収益が上がる仕組み
ICT総研が「2022年 定額制音楽配信サービス利用動向に関する調査」の結果を発表しています。これによれば定額制音楽配信サービス(いわゆる音楽サブスク)の利用者は2022年末に2,770万人だそうです。日本の人口の20%くらいでしょうか。ちなみにアメリカは89.1%がサブスクかダウンロードを使っています。
ここでサブスクの仕組みを思い出してみると、サブスクとはサービス全体の収益を再生数に応じて山分けするという仕組みです。限られたパイをみんなで奪い合う図式なのです。アーティスト個人の取り分を増やすにはいくつかの方法が考えられますが、主に「より多く聴いてもらう」か、あるいは「サブスクサービス登録者が増える(パイが増える)」の二つになります。
そうすると、なんだかんだで日本のアーティストの曲が一番聴かれるのは日本なので(特に歌モノ)、日本のサブスク登録者が増えることが上記2点を同時に改善して日本のアーティストのサブスク収益が増えることになる一番の早道ということになるのではないでしょうか。
もちろんCDの良さはあります。筆者自身もデザインまでこだわってCDを作ったのはとてもいい思い出ですしまた作りたいと思っています。
ただ、サブスク地獄に落ちろとかサブスクは儲からないからCD買えとかいった意見は、日本の音楽業界を衰退させアーティストの収益を更に狭める方向の意見でしかないのです。
もう一つの要素「アーティストの取り分」について
さて、ここまでのお話で抜けている要素が一つありまして、それはアーティストの取り分です。アマチュアがサブスク配信するとストアとディストリビューターに手数料を支払うことになりますが、それ以外は全て自分の懐に入ってくれます。ところが旧来の契約システムに居るアーティストは、その収益から更にレコード会社や出版社なんかが取っていくことになるはずなんですよね。それは確かにアーティストの取り分が少なくなると思います。ですがそこでサブスク事態を批判をしても上記のようにデメリットだらけだと思うので、どうせ批判するなら業界の構造を批判した方が有益なんじゃないかなと思ったりしました。
まとめ
とても長文となってしまいましたが、要するに、サブスク批判する人は声が大きいけど筆者のようにサブスクで大変助かっている人は沢山いるんですよ、というのが一番言いたかったことです。
そして、すべてのアーティストが潤うためにはリスナーにさっさとサブスク移行してもらった方がいいので変な声を上げて足を引っ張らないで欲しいなあというのがもう一つの言いたいこと。
皆さんも便利なサブスクをどんどん使って業界を盛り上げていきましょう!
こんにちは。サブスクって結局、聴く側として便利さではピカイチですよね…
そこに利益のためにCD買ってくれというのは傲慢、なんか分かります。
私はサブスクは配信するより聴く側です。(サブスクによる楽曲配信を検討したことありますが表記などの制約が多すぎて心折れました^^;)
ちなみに私自身は販売・配信は、CDでもなくサブスクでもなく、自分のショップでのダウンロード販売がすごく楽に感じてます…表記などの制約もなく、ファイル形式も自由、審査もいらなければ価格設定もどうとでもできるし…
音源の権利がすべて自分にある個人クリエイターとしては自ショップという選択肢もあるかも、と思っています。
そして有料素材という特性上、最も向いたやり方でもあります。
それと、ブログは何度か拝見してますがnoteされてたのですね。
結構ブログ記事とか見て回るの好きなので、そちらも拝見しますね。
こんにちは。
ショップは自分のお店ということでかなり自由度高そうですね。
サブスクは他の人に販売を受け渡すイメージなので当然そこで手間がかかりますので。
その辺は好みで選ぶといいかもですね。
あ、noteもありがとうございます!